企業設立のプロセス
なるべくコストをかけずに
企業を設立するのは決して難しくありません(むしろ、継続・発展させることの方が大変です)。
会社を作るって難しいことだと考えていませんか?
そんなことはありません。びっくりするほど簡単。
・オフィス(登記上の住所)を用意する
・定款等の必要書類を作成し届け出る
・続けるための基盤を用意する
この程度です。
なお、将来的に事業を拡大せずこじんまり活動しようという場合は、個人事業として始める手もあるでしょう。
ここでは、あくまで会社(株式会社・合同会社)を設立することを前提にします。
・個人事業主・会社 どっちがいい?
会社を設立するのは簡単。でも、継続していくことは大変です。
オフィスレンタルなどの最低限の費用や毎年の納税など、出ていくものは止められません。
また、一定のキャッシュフロー、収益が見込めないうちは、交通費や喫茶店などでの会議費の支払い、コピー代などの事務コスト負担などが意外と重くのしかかってきます。
(企業勤めの人が起業する際、たいていこういった支出に悩まされます)
それでも、皆さんのセカンドライフを充実したものにするためには、自らにハードルを課し、起業することをお勧めしたいです。
「まずは、やってみなはれ」(松下幸之助の言葉)
です。
まずは、やってみなはれ
自宅を選ぶ?
それとも、バーチャルオフィス? レンタルオフィス?
個室にする? コワーキングスペースにする?
以前に比べて会社の登記がやりやすくなっています
ウェブサービスを有効活用してみては?
毎年必ず必要な決算処理と税務申告
クラウドサービスを有効活用してみては?
会社を経営することで、サラリーマン目線ではない「経営者視点」が得られます
長く続けるつもりなら、会社設立を!
オフィス(登記上の住所)を用意する
会社設立登記の申請の際に、自宅の住所を「本店所在地」として記載することで、会社の登記上、自宅が「本店所在地」として認められることとなります。
自宅がオフィスなら仕事のための移動もなくて楽。リモートワーク全盛のこの時代に合った選択かもしれません。
それでも、プライバシーの面で自宅を本店所在地にすることに躊躇する人もいるでしょう。
今はバーチャルオフィス・レンタルオフィスが充実しています。レンタルオフィスは個室や共有コワーキングスペース、時間単位の会議室利用といった、様々な形態での利用ができます。
また、多くのレンタルオフィスでは司法書士や税理士と組んで会社設立の代行サービスも提供しています。
バーチャルオフィス:自宅で仕事をして、バーチャルオフィスで郵便物転送をしてもらう、といった仕事の仕方もあるでしょう。
レンタルオフィス(コワーキングスペース):レンタルオフィスに自身のノートパソコンを持ち込んで、メールや資料のプリントアウト、リモート会議への参加、と、ほとんどの仕事ができるはずです。
レンタルオフィス(個室):個室があれば、周りからの視界を遮断でき一定のセキュリティが期待できます。広いスペースでなくとも書類や書物などを備えおくこともできます。個室・鍵付きキャビネットが必須な業種・業務もあるでしょう。
コワーキングスペース+トランクルーム:個室は高額なので、コワーキングスペースと別に書類保管のためのトランクルーム(レンタル倉庫)を利用する、という方法もあります。
以下は、私がこれまで利用したことがあるレンタルオフィスやレンタル倉庫です。
これら以外にも数多くのレンタルオフィスがありますので、ご自身で調べてみることをお勧めします。
長年お世話になったレンタルオフィス。コワーキングスペース(フリースペース)会員は都内・近郊に数か所あるオフィスの利用が可能。設立登記サービスや交流会、クラウドファンディング支援なども充実。現時点で関西にオフィスがないのが玉に瑕。
一定の条件の下、都内・関西の複数のコワーキングスペース利用が可能。交流会もあり。別に千葉県で営業許可付きのシェアキッチンを運営。
レンタルオフィス大手の一つ。制約はあるが、全国のコワーキングスペースを利用できるタイプの契約も。
レンタルオフィス大手の一つ。バイリンガル対応サポートなど高グレードな印象。
トランクルーム(レンタル倉庫)の会社。コンパクトで清潔。荷物配送時のサポートなど有ればなお良いが、そういったサービスは薄い。
定款等の必要書類を作成し届け出る
安価・効率的な会社設立:
以前と比べて、会社設立を効率的に安価に行う方法が増えています。
法人登記の各種書類をネットで簡単に作成できるサービスがありますので、もし一人で対処したい場合はこういったサービスを活用するのもいいでしょう。
株式会社と合同会社の違い:
会社設立の際、検討に上がるのが「株式会社」「合同会社」です。
株式会社に比べ合同会社はやや社会的信用度は低いですが、設立費用が安くて済む、決算公告の義務がない、利益配分の自由度が高い等、有利な点もあります。
手間にはなりますが、いったん合同会社を設立して、事業が軌道に乗ってから株式会社に組織変更をする、という選択肢もあります。
株式会社も合同会社も出資者の最低人数は1人、最低資本金は1円なので、自分だけの手軽なビジネスが開始できます。ただし、極端に資本金が低いと信用度が小さく、現実問題として事業拡大や融資の際に困るかもしれません。
株式会社設立の大まかな流れ:
株式会社を設立する場合、大まかには、1.定款作成⇒2.認証⇒3.出資⇒4.登記、という場枯れになります。合同会社の場合は、2.認証が不要になります。
ここでは、株式会社設立の大まかな流れを説明します。
1.定款作成
発起人が「会社概要」を決めて「定款」を作っていきます。
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★発起人を決める★
・発起人が1人の場合は「発起人決定書」を作成する
・発起人が複数の場合、発起人会を開いて、「発起人会議事録」を作成する
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設立方法を決める
・発起設立・・・発起人だけが出資して株主となる(通常はこの設立方法を選択)
・募集設立・・・発起人以外に、株式引受人を募集する(金融機関の払込金の保管証明や株式申込書作成などの煩雑な手続きが必要)
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★商号を決める★
・会社名の前か後ろに「株式会社」を入れる
・部署名などは商号に出来ない
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株式の譲渡について決める
株式譲渡制限会社・・・すべての株式が「会社の承認がなければ譲渡できない」会社(通常はこちらを選択)
公開会社・・・1株でも「自由に譲渡できる株式がある」会社
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機関を決める
・株主総会、取締役、取締役会、監査役、会計参与、会計監査人など
・株式譲渡制限会社を選択していれば、「取締役1人」でも可
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資本金を決める
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★出資額を決める★
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現物出資
・現物出資ができるのは発起人だけ
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株式について決める
・株券は通常発行しない(定款への記載は不要)
・1株の価額は、1万円、5万円などの分かりやすい額に
・発行可能株式総数を決める
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役員を決める
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★本店所在地★
・定款は「最小行政単位」まで(例:東京都港区)。登記は「地番」まで(ビル名、階数、部屋番号はなくてもよい)
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★事業目的を決める★
・定款への記載、登記が必要
・箇条書きで3~10程度の項目記載
・最後の項目は「前各号に附帯または関連する一切の事項」と記載
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公告方法を決める
・官報
・日刊新聞紙
・電子公告(ホームページ) のいずれか
・会社合併や解散などは「官報」で公告する(法定)
・決算を電子公告用で行う場合、会社設立登記の前に公告用のホームページを用意し、URLを登記する必要がある
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事業年度を決める
(★は絶対的記載事項)
2.定款の認証
定款の認証とは、定款が発起人によって正しく作られたことを、公証人が確認・証明することをいいます。株式会社の定款は公証人による認証を受けなければ効力を持つことができません。
通常は、一旦、公証役場に定款案を送り事前チェックを受け、定款ができたら予約を取って公証役場に行き認証を受けます(代理人でも可)。
公証人が定款を確認した後、収入印紙を貼り、消印を押します。収入印紙を貼ったものは公証役場で保管され、登記用(謄本)と会社保管用(原本)の2部が返還されます。
3.出資金の払い込み
登記前の段階では会社の口座が有りませんので、発起人の個人口座に入金・振込をします。発起人が複数人いる場合は、発起人のうち誰か1人の個人口座に入金・振込します。
個人口座に出資額分の残高があるだけではダメで、必ず資本金(出資金額)の新たな入金が必要です。
定款で発起人が引受ける株式数を定めるため、入金・振込は定款作成の後にする必要が有ります。通常は定款の認証を受けた後に行います。
出資金が払い込まれたら、その通帳のコピー(表紙・表紙の次のページ・入金が確認できるページ)やネットバンク払い込みスクリーンショットなどを用意し、設立時の取締役などが調査を行い、「払込証明書」を作成します。
現物出資がある場合は現物出資を行う発起人が「現物出資財産引継書」を作成し、設立する会社の取締役、監査役が現物出資財産について調査し「調査報告書」を作成します。
4.登記
定款の認証、資本金の払込が終わったら管轄の法務局に設立登記を行います。申請方法には窓口、郵送、オンラインの3つがあります。
申請から1週間前後で登記が完了します。会社の「印鑑証明書」「登記事項証明書」を取得します。
設立登記の必要書類:
①「設立登記申請書」と「登録免許税貼付台紙」
②「登記すべき事項」の提出(FD、CD-R、オンライン申請)
③「印鑑届書」
④ 添付書類一式
必須な添付書類は「定款(謄本)」「取締役の印鑑証明」です。
設立方法によって必要書類が異なりますし、書類によって押印する印鑑の種類も異なってきます。
そのほか、「同意書」「本人確認証明書」「委任状」「検査役の調査報告書及びその附属書類」など、定款に記載した内容、現物出資など変態設立事項、機関設計など、ケースに応じて必要となる書類があります。
添付書類(あくまでも一例)
(必須なもの)
-定款(謄本)
-取締役の印鑑証明書
(現金出資の場合)
-払込みを証する書面
(現物出資の場合)
-調査報告書
-財産引継書
-資本金の額の計上に関する証明書
続けるための基盤を用意する
会社を続けると、毎年必ず必要なのが決算処理と税務申告です。
売上が上がりそれに伴う収入・支出項目が増える過程で、どこかで信頼できる税理士・会計士と顧問契約することが必要になるでしょう。
ただ、スモールビジネスとして会社を経営する場合、あるいは当初のうちは、自分一人で決算処理や税務申告を行う方がいいでしょう。
費用の面でもそうですし、決算処理・税務申告は会社運営の基盤ですから、経営者自身で業務を体感しておくことが望ましいと思います。
特に、シニア金融マンの方がほかの方々より有利なのは、財務諸表にある程度慣れている、という点かもしれません。
これから会社を始める場合、会計ソフトは電子帳簿保存法の施行もあり、クラウド一択だと思います。
自分の周りで評判のいいクラウド会計ソフトはこちら。
個人事業主・会社 どっちがいい?
スモールビジネスでも、将来、一定の売上が継続的に上がる見込みが有れば、会社を作ることをお勧めします。少なくとも、長い間サラリーマンとして会社に雇われるだけだった視点が、経営者になれば大幅に変わるはずです。
とはいえ、個人で趣味の延長のような形でビジネスをしたい、という場合など、わざわざ会社を設立しなくていい場合もあるでしょう。
個人事業主・会社のメリット・デメリット
(個人事業主)
メリット
・登記申請不要で手軽に始められる
・開業届には費用が掛からない
・会計・税務処理が会社よりは楽
・社会保険料負担が法人より低い
・(法人住民税がかからないため)赤字の場合は税金支出がない
デメリット
・社会的信用度が低い
・銀行からの融資が受けづらい、クレジットカード審査が通りにくい
・無限責任である
・所得が多いと所得税率が上がる
・事業所得とほかの所得と損益通算できる場合もあるが、ハードルが高い
・赤字の繰り越し控除の期間が法人より短い長い(3年)
(会社)
メリット
・社会的信用度が高い
・銀行からの融資が受けやすい
・有限責任である
・経費の幅が広がり、場合によっては節税ができる
・赤字の繰り越し控除の期間が長い(7年)
デメリット
・登記申請が個人事業主に比べると面倒
・設立登記に費用が掛かる
・会計・税務処理が面倒
・社会保険への加入義務がある
・赤字でも法人住民税の支払いが必要