今考えたら絶対アウトな話を思い出した。
顧客への決済資金として現金を持ち出すなど今ではあり得ないが、当時は普通だった。
仮名・借名取引(=「手張り」)口座で、ノルマのため損して売った株の売却代金を総務次長決済の下、出納係で現金持ち出し、営業カバンに詰める。
「お客様に受け渡しに行ってまいります!」
という体だが実のところ、自分の銀行・信販口座に返済するのである。
友人名義の印鑑は営業カバンに持ち歩き、受取りサインは自筆がバレないように書いた。
当時は現金受け渡し後の帰宅も自由だった。
ある日会社の別支店メンバーたちとの同期会で、この「手張り」決済金が入った封筒が営業カバンに入ったまま、飲みに参加することになった。
宴の興が乗り2次会、3次会と続き、財布にある金では支払いきれなくなった。
営業カバンには、自分のローンカードで借りた「友人名義の決済金」が会社封筒に入っている。
3次会のスナックの精算時、営業カバンから会社封筒を取り出し、100万円の札束から1万円札を「ピッ」と抜き出して支払った。
同じ支店の同期仲間はその札束がどんなカネかわかっていたが、別支店メンバーはギョッ!としている。
ワケを知っている同じ支店の同期たちは悪乗りして、
「これは、見なかったことにしよう。なっ」
と、いかにも自分が顧客のカネに手を付けたかのように言う。
その場のノリもあって「これは自分が借りた金だ」と言いづらいので
「頼むよぅ。へへへっ」などと自分もお茶らけてしまった。
あの時の別支店の同期は、「あいつは顧客のカネに手を付けた」と勘違いしているに違いない。
非常にマズイ。
SNS全盛の今、有名人だけでなく一般人でも過去の行為がほじくり返され、その情報がネット上に記録され、デジタルタトゥーと化す。
過去の“やらかし”情報で人生を棒に振る人もいる。
会社のノルマ達成のために金を借り、手数料稼ぎの損切りで資産を減らし続けただけでも辛い過去なのに、その上「顧客資金に手を付けた信用できない奴」などと思われていたら痛すぎる。
当時「自分」という軸が無かったゆえの過ちだと思う。そして、30年前のコンプラはそんな程度だった。